『やがて君になる 佐伯沙弥香について』は漫画『やがて君になる』の公式スピンオフ小説です。
著者は入間人間、挿絵は原作者の仲谷鳰。
レーベルは電撃文庫で出版社はKADOKAWAです。
2018年11月10日から2020年3月10日までに全3巻が刊行されました。
佐伯沙弥香(さえき さやか)が小学5年生の時の夏からはじまり、大学2年生になって漫画より少し先のところまでの物語が収録されています。
こちらを読むことで沙弥香の恋路を通して、性格や考え方といった部分をより深く理解できました。
また漫画では多くは語られていない部分や収録されていない期間の話に加え、漫画の最終巻で名前だけ登場するハルについても知ることができます。
それでは『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の各巻のあらすじ・感想を紹介させていただきます。
※漫画を最後まで読み終えている前提で本記事を書いています。
※各巻のあらすじに一部ネタバレになる内容があります。
あらすじ
1巻
『5年3組佐伯沙弥香』
沙弥香が小学5年生の夏から物語は始まります。
当時の沙弥香はいくつもの習い事に通っており、そのなかのひとつがスイミングスクールでした。
そこには職員の言うことを聞かない自由奔放な女の子がいました。
日に焼けた、いかにも活発な見た目と元気な性格。
沙弥香は不真面目な人が嫌いなのでこの女の子が苦手なのですが、なにかと絡んでくるのです。
そこには女の子自身もちゃんと理解できていない気持ちが関係しているのでした。
こちらは沙弥香にとっての原体験的な話になっています。
『友澄女子中学校2-C佐伯沙弥香』
沙弥香が中高一貫の友澄女学園で中学2年生になり、漫画でも登場する初めての恋人・柚木先輩との話になります。
漫画だと沙弥香が柚木先輩に振られる場面はありますが、それまでの詳細は語られていませんでした。
この章では沙弥香が柚木先輩からどのようにアプローチされて付き合い初め、どのような交際期間をへて別れるに至るのかが丁寧に描かれています。
漫画での沙弥香も相当に柚木先輩を嫌っていましたが、その訳がより理解できる内容になっています。
沙弥香の恋愛に対する思いや考えが描写されているので、沙弥香というキャラクターへの解像度があがる内容です。
柚木先輩と別れたあと時は進み、沙弥香は友澄女学園を離れて遠見東高校の入学式を迎えます。
その時に新入生代表の七海 燈子(ななみ とうこ)を初めて目にして、その存在感に衝撃を受る沙弥香。
あまりに燈子が気になる沙弥香は入学式が終わり次第、燈子に話しかけます。
すると燈子から生徒会に一緒に入らないかと誘われるのでした。
2巻
『恋と、小糸』
小糸 侑(こいと ゆう)が生徒会の見学にくるところから始まります。
この章では沙弥香と侑のやりとりがメインで、侑に対して抱く印象や思いが描かれています。
漫画でも沙弥香と侑はお互いに丁度いい距離感でやりとりしていますが、本作でもそれが感じられます。
『平行線』
高校入学式翌日からの話で、沙弥香が燈子との距離を縮めようと頑張る初々しい姿を見れます。
ここでは漫画でも大切な生徒会劇の話も出てきます。
燈子から生徒会で劇をやりたいという話を聞き、協力することにする沙弥香。
劇をやりたい旨を生徒会長に伝えるも準備時間がないことや、設備・人手もないことを理由に断られてしまいます。
そこで今年は諦めて、来年に燈子が生徒会長になってから劇をできるように準備を始めることにしました。
そのなかで沙弥香は燈子の小学校の同級生に出会い、燈子が小学生の頃の話を聞きます。
当時の燈子は今とは結びつかないような地味な女の子で、姉の澪を亡くしていることを知るのでした。
この話で今の燈子は完璧を演じている姿なのだと知り、そんな彼女を好きだと思う気持ちは本当なのか沙弥香は葛藤します。
そこから沙弥香なりの答えを出していくのでした。
この章は沙弥香と燈子が高校1年生の文化祭を過ごすところまでが描かれています。
最後に少しだけ沙弥香と燈子が高校3年生になり、クラス分けを見ている場面もあります。
『空の彼方みたいに』
沙弥香は大学2年生の夏を迎えます。
講義の合間に人気がないベンチで沙弥香が過ごしていると、そこに涙で目を泣き腫らした女の子が現れます。
気をつかいその場を離れる沙弥香。
すると偶然にも次の講義がその女の子と同じであり、流れで女の子は沙弥香の隣に座りって講義を受けるのでした。
それから沙弥香はそのひとつ年下で大学1年生の女の子になつかれて、なにかと絡むようになるのです。
3巻
この巻は漫画の最後に名前だけでていた沙弥香の恋人の枝元 陽(えだもと はる)こと、ハルとの物語です。
どのように2人が仲を深めていくのかが丁寧に描かれており、漫画でのハルって何者なんだ、という気持ちに答えてくれます。
全体を通して沙弥香とハルの恋愛模様が描かれており、沙弥香の恋愛の集大成になっています。
『停泊船』
ハルから沙弥香が告白される場面です。
ここは導入なので、そこに至るまでのいきさつは次の章から始まります。
『透明の海』
ハルから沙弥香への猛アピールの様子だったり、ハルの人物像が知れたりする内容です。
2人が最初出会ったときにハルが泣いていた理由もここでわかります。
また大学生らしいイベントもあり、沙弥香が20歳を迎えてハルのアパートで初めてのお酒を飲む場面があります。
その時に沙弥香がハルから告白されるまでが描かれています。
『抜錨』
沙弥香はいつもの喫茶店の店主である都(みやこ)や、高校時代の友人の五十嵐 みどり(いがらし みどり)・吉田 愛果(よしだ まなか)に頼りながらも自分のなかでハルに対する思いに答えを出します。
この章では沙弥香とハルが付き合うようになり、その後の話まで描かれています。
また、漫画最後より後日に沙弥香と燈子が会って話をする様子も収録されています。
『星が揺れる』
寒い日の夜、沙弥香とハルの微笑ましい締めのエピソードです。
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感想
重要人物である佐伯沙弥香について深掘りされている本作は、沙弥香が好きな人にとってはかなりおすすめです。
小説なこともあって沙弥香の感情や考えが細かく表現されていて、読み応えがあります。
漫画では語られていない沙弥香を知れますし、なにより名前しかでていなかった恋人・ハルとの物語を見れます。
ただし小説で全3巻なので、普段小説を全く読まない人は少し長く感じるかもしれません。
そういった人は知りたい巻だけ購入するのもありですが、できれば最初から読んでいくと沙弥香についての理解が深まります。
僕が個人的に嬉しかったのは、沙弥香と燈子の共通の友達である吉田愛果と五十嵐みどりの絡みがでてくることです。
漫画では出番が少なかったので、仲がいいのは分かりつつも解像度が低かったです。
その点小説では愛果とみどりの微笑ましいやりとりや、沙弥香との絡みも見られます。
また、沙弥香と侑がいつもの喫茶店で話す場面など、2人の絡みがあるのも嬉しいポイントでした。
この2人の距離感というか関係性が僕は好きなので、こういったふとした場面もよかったです。
漫画『やがて君になる』が好きで、かつ佐伯沙弥香が好きという人は一度手に取ってみることをおすすめします。
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●『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の関連作品は以下になります。
月刊コミック電撃大王(KADOKAWA)にて2015年6月号から2019年11月号まで連載され、単行本は全8巻です。
累計発行部数が最終巻である第8巻の発売にともない、2019年11月27日に100万部を突破しています。
製作会社TROYCA、2018年10月5日から12月28日まで放送の全13話です。
作画・内容ともに原作に忠実ですごくおすすめです。
ただ完結はしておらず、続きを漫画で読む必要があります。
詳細は以下の記事に書いてありますので、よければご覧ください。
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KADOKAWAanime公式YouTubeチャンネル TVアニメ『やがて君になる』 PV 第1弾
全2巻。
2巻目は原作者の仲谷鳰による完全新作の短編も特別収録されています。